突然ですが300年ってどれくらいの年月だと思いますか?
日本だと徳川幕府が続いたのが260年。
15代引き継ぎ存続し続けました。
日本における300年前は江戸の中期。
徳川吉宗が8代目の将軍となった頃です。
もちろんスマホもインターネットもなく、手紙も飛脚が走って運ぶ時代です。
ワンピースなら24年で100巻なので300年続くと1250巻に達します。
きっとルフィの懸賞金も500億ベリーくらいまで跳ね上がり、
バギーは四皇も仏も神も束ねる全知全能たる存在として君臨している時代でしょう。
今回紹介するのはソフトバンクグループのトップである孫正義氏が
300年栄え続ける企業を作る最初の30年のエピソードが多く載っている
「孫正義300年王国への野望」です。
300年続く企業とはどんな企業なのか。
それこそ日本史の教科書に載り、義務教育で誰もが知る存在になるでしょう。
300年続く企業を作ろうとする人間がどんな人生を歩んできたのか。
壮絶という言葉すら稚拙に聞こえるエピソードの一端を紹介していきたいと思います。
ぜひ最後まで読んで頂き、興味を持ってくれたら嬉しいです。
- 日本一の資産家の経営の一端が見える。
- 物語調でストーリー自体がとても面白い!
- 自己啓発として熱量がめちゃくちゃ上がる!
- ページ数が多く読み切るのに体力がいる(555ページ)。
- ソフトバンク(孫正義)視点での物語。
- 孫正義がエネルギッシュすぎて落ち込むかも?
①はじめに感想
1.1 ページ数が多く読むのに時間がかかるがサクサク読める
本著は555ページあり、非常にボリューミーです。
読み応えがあり、ひとつ一つのエピソードもめちゃくちゃ面白いです。
ソフトバンク社内の揉め事や孫正義が発した言葉も小説のように描写されており、
次の展開を気にさせる作りになってます。
例えば孫正義が「モバイルインターネット時代が来る」と、
Apple創業者のスティーブ・ジョブズに話した時のエピソード。
ジョブズは孫正義の言葉に賛同した。
その時に返した言葉が
「じゃあ、俺と手を組んでくれ。そうでなければスティーブ。俺は君と対抗するよ」
引用元 孫正義 300年王国への野望 著 杉本貴司
iPhone大好き日本人の我々からすると恐ろしい言葉だ。
後述するがこの言葉の後にソフトバンクがiPhoneの独占販売する経緯は非常に面白いです。
他にも自転車操業とも言えるギリギリの経営に関する描写が多々ある。
基本ベースとして孫正義は契約や商談を成功させてからお金の工面や環境構築をする。
創業からしばらくの間、期限を切られた後のない状況が慢性的に続きます。
これがワンピースだったらウソップあたりが離脱してもおかしくありません。
現実は小説よりも奇なりを体現しております。
読んでいて「こんなことを続けていたら身が持たない」と何度も思わされました。
自分だったらと仮定するとゾッとします。
それでも孫正義という男の半生は文章で綴られたものであっても
胸を熱くさせるものがありました。
「何かでかいことしたい」
「今の生活に不満がある」
という方は是非読んでみてほしい一冊です。
価格:1,980円 |
1.2 孫正義を支える周りの描写はさながらワンピースの麦らわ海賊団
本著は目次の後に孫正義と関わる人間の相関図が載っています。
当然ながら孫正義にも創業時代があり、創業当初はみかん箱の上でアルバイト2人へ向かって
「豆腐のように1兆2兆と数える企業にする」と高らかに宣言し、2人とも辞めたというエピソードは語り草です。
ソフトバンクの幹部のほとんどが社外からの来ているというのも特徴のひとつです。
取引先の銀行だったり同業他社だったり。
ほぼ初対面から「お前、うちに来い」という描写も何度か目にしました。
仲間になった彼らは船長(孫正義)から無茶振りをされます。
- 入社3ヶ月でソフトバンクの30年計画を作ってこいと言われる。
- 30年計画といっても根本は300年続く企業が目標のため、「長く生き残る」定義について調べる。
- 業務そっちのけで歴史書やサラブレットの血統や昆虫の生態など様々な本を読み漁る。
- 当時、日本の時価総額ランキング1位のNTTにYahooBB(ブロードバンド)で勝負を挑む
- 通信環境も整っていないのに100万人を新規顧客を集めさせられる。
- パラソル部隊と称し、そこらかしこでモデムも無料提供。
NTT本社の目の前でパラソルを立てることも。 - 集客に成功したが通信環境整っておらずクレームが殺到。
- 当初は大赤字(のちに大飛躍を遂げる)。
)
- スプリント(アメリカ3番手の通信キャリア)を立て直して来いと言われる。
- いざ現地に向かうと現地の社員は言うことを聞かない。
- 赤字を垂れ流しているにも関わらず現場に危機感がない。
- 1ヶ月の出張予定が2年帰って来られなくなる。
一部を切り取っただけでも無茶振りが過ぎます。
僕みたいなサラリーマンではとても耐え切れる自信がありません(泣)
恐ろしいのが上記のようなことを船員たちはやってのけて来たこと。
麦わら海賊団に引け取らない猛者たちがソフトバンクグループを支えています。
本著でもソフトバンク支える「仲間たち」に大部分のページを割いている印象です。
1.3 孫正義は想像以上にとんでもない
孫正義は想像以上にとんでもない。
読み終えた後に抱いた感想でした。
本著の最後のページに記された言葉が全てを集約しているのですが、
前振りとも言えるエピソードでもすでに化け物じみています。
ちなみに本著を読む前に僕が持っていた孫正義の知識は以下である。
- ソフトバンクを作った
- 日本一の資産家
- 髪の毛が後退しているのではない。私が全身しているのだ。
の人である(笑)
実績、マインド共に一流であることはたった3つの知識でも「理解」できます。
しかし事業家としての本質を語るのは555ページでは足りないと思いました。
例えば、
NTTへ真っ向勝負を挑み、時には「総務省を提訴する」
という字面だけでも恐ろしいパワーワードを繰り出しつつ、
ブロードバンドのシェアを勝ち取り、
モバイル事業ではボーダフォンの超大型買収を成し遂げ、3社寡占状態に持ち込み、
売上高を1兆2兆と数える企業に成長させた。
他にも
- 20歳でシャープに電子通訳機器を1億円で売る(10社に門前払いされ最後の1社がシャープ)
- まだ何ひとつ実績がないのに量販店いっぱいにソフトウェア並べると豪語し独占契約を結ぶ
- 本家yahooがまだ創業数人程度の時から目をつけ買収(その他の買収はほぼ鳴かず飛ばずの失敗)
- 慢性肝炎で余命5年を言い渡される。暇な病室で本を3000冊読む。
- 慢性肝炎の治療方法が見つかり回復するも復帰した会社は臨時で任せた社長によって内部崩壊の危機に陥っている。
- 主要幹部が地方支社に異動になったり、経営方針に耐えかねて退社していたり。
- 買収や投資というリスクな手段を多々使うため日本一の借金王である。
- 日本3番手の通信会社のボーダフォンを1兆7500円で買収するも、営業部門は負け癖ついていて経営状態は燦々たるもの。
- 日本で3番手の通信キャリアでシェア獲得の成功体験を持ち込みアメリカでも同様に通信キャリア3番手のスプリント、4番手のT-Mobileの買収に着手。
- しかし日本よりも3社寡占を懸念するアメリカの政治的意向によりT-Mobileの買収はできず。
- スプリントのみで競争に挑む想定外な自体も、どうにか立て直し黒字化に成功。
- 東日本大震災時があまりのショッキングで1年間社長を辞めて被災地に行くと言い出す。
成功体験のように綴っているが、本著には成功までの険しい道のりが細かく描写されている。
是非その「紆余曲折」を味わってみてほしいと僕は願っております。
②印象深いエピソード
2.1 後継者候補に告げた」船長として挑戦してみたいんだ」
孫正義は10代の頃に掲げた人生設計がある
- 20代で名乗りを挙げる
- 30代で軍資金を貯める
- 40代でひと勝負かける
- 50代で事業を完成させる
- 60代で次の世代に事業を継承する
長年に渡って孫を支えたソフトバンクグループNo.2の宮内謙さんを差し置いてニケシュ・アローラを自身の後継者と表明しました。
ニケシュのスカウトは2014年のことなので50代のうちから後継者の当たりをつけていたことになります。
結論から言うと、ニケシュは2年で退任することになります。
ニケシュに退任の話をする時に告げたのが以下である。
「ニケシュ、やっぱり俺は新しい挑戦に打って出たいんだ。人類史上最大のパラダイムシフトが目の前に迫っている。やっぱり俺は挑戦してみたい。だたやっぱりやるなら俺はキャプテン(船長)だ。あと10年は船長のままで走りたいんだ。君を副船長のまま10年も待たせるのは申し訳ないと思うのだが、率直なところ君はどう思う?」
孫正義 300年王国への野望 著 杉本貴司
2016年6月、株主総会の前日にニケシュの退任が発表されました。
株主総会で退任に至る経緯やソフトバンクに対する想いについて語っております。
ここまで至るのに複数の事業を成功させてきた孫正義。
すでに豆腐を数えるように売上高を1兆2兆と数えられるようになり、
この年は売上高が9兆円にも登っております。
常人なら一生豪遊してヒャッハーして暮らそうと思うでしょう。
(僕なら最初のソフトウェア流通業を当てた時点でヒャッハーしてると思います。
むしろもっと前のシャープへ翻訳電子辞書を持ち込んだ時点でヒャッハーですね……。)
まだまだ現役であり、血の気があり、ワンピースでいう四皇に上り詰めても
飽き足らず、さながら海賊王を本気で目指すルフィにも負けず劣らずの精神だと思います。
2.2 ヤフーの不満分子 そして経営刷新
サラリーマンなら共感してくれると思うのですが
会社への不満や意見は思っていても胸の奥にしまい込み、
気の会う同僚やらに愚痴って発散する。
酒の席でテンションが上がり「俺が組織を変える!」と、
一念発起して自部署の根本的あり方を見直すよう提言しても
「そんなこと言っている暇があったら今の仕事をきっちりこなせ」
「言っていることは分かるがお前が言うほど簡単なことじゃない」
と、表現は違えど異口同音に諭されたことはないでしょうか。
ヤフーにも当時の経営のあり方に不満を抱える社員がいました。
村上臣(むらかみじん)。
モバイル事業の責任者。
ヤフーでモバイル? あまり馴染みがないと思います。
現に当時のヤフーはモバイルには力を入れず、
パソコンをメインとした検索エンジンなどに力を入れていました。
毎年、増収増益だったため経営陣が新しいことへ目が向かないのも無理はなく、
大企業病の典型例だと思います。
村上さんは「これからはモバイルの時代がくる」と主張していたが、
真剣には取り合ってもらえませんでした。
ヤフーが大企業病にかかっていることも危惧していましたが、
村上さんの心の叫びは届かず、「もういいや」と退職を決意。
退職するも孫正義に「俺の見えるところにいろ」と言われ、
在籍していたソフトバンクアカデミアには外部生として残ることになりました。
もう退社した人間ということもあり、元同僚で自分同様の不満分子から声を集め、
アカデミアのプレゼン大会でぶちまけるという奇行に出ました。
ちなみに村上さんのプレゼンを孫正義も傍聴してました。
トップの目の前で会社の不満をぶちまけるというのはなかなかのホラーです。
結論から言うと、このプレゼンをきっかけに、
2ヶ月後にはヤフー経営陣は刷新されることになります。
ヤフージャパンの創業者でもあり、十分な成功まで導いた功労者でもある
井上雅博氏も退任することになりました。
下からの意見を吸い上げた美談のようにも見えますが、善悪の話ではありません。
ヤフージャパンは増収増益を続けていた親孝行企業でもあります。
それでも井上氏退任までの数年は成長が鈍化していたのも違いありません。
2012年の退任後の成長率も目覚ましいです。
孫正義という人間が「立ち止まれない」「突き進む」という
強烈な個性を持っていることが垣間見える出来事だと思います。
2.3 スティーブ・ジョブスからの「マサ、そんな醜いスケッチを俺に見せるなよ」
まだボーダフォンを買収する少し前に孫正義は
「これからモバイルインターネットの時代が来る。その時に最強のモバイルマシンが必要」と、
Appleの創業者スティーブ・ジョブズに携帯電話とipodを組み合わせたスケッチを見せました。
その時ジョブズからこう言われました。
「マサ、そんな醜いスケッチを俺に見せるなよ」と。
さらに、
「お前の言うことは正しい。最強のモバイルマシンを作るべき時期がきたという考えには、俺も全く賛成だ。そのことを俺に言いに来たのはマサ、お前が初めてだ」
とも言い残した。
ボーダフォンを買収し、携帯電話会社を手に入れた孫正義は再びジョブズに会いに行く。
最強のモバイルマシンを手に入れるために。
そこで言われたのが
「これを見たらマサ、お前はきっとパンツに漏らすぞ」
iPhone試作機を見せてもらうことはできなかったが、
ジョブズが最強のモバイルマシンを使っていることは間違いない。
2人の接触後、半年後にはiPhoneが発表されます。
- 2006年4月 ソフトバンクはボーダフォンを1兆7500億円で買収。
- 2007年1月 AppleがiPhone正式発表。
- 2007年6月 iPhoneがアメリカで初めて発売。
- 2008年7月 日本でiPhone3Gをソフトバンクが独占販売。
- 2011年10月 auがiPhoneの販売を開始。
- 2013年9月 NTTドコモがiPhoneの販売を開始。
日本のおけるiPhone商戦でいかにソフトバンクが抜きん出て早いかが分かります。
日本におけるiPhoneのシェア率から見ても、
早くから独占販売ができたソフトバンクが契約数を伸ばすのも納得です。
孫正義を語る上で、日本人にとって最もインパクトのあるエピソードでしょう。
③著者に倣って最後に孫正義の言葉
555ページの本を読み終えると、通常は一種の読了感で気持ち良さに包まれます。
大きく深呼吸をしたら背伸びして体をほぐしたりと。
言葉にすらなら「ふぅ〜」という表現が当てはまるのではないでしょうか。
しかし本著の最後に綴られた孫正義の言葉がそれを許してはくれませんでした。
もしくは許さないからこそ孫正義は孫正義であると強烈に突きつけられました。
最後にこう綴られていました。
「僕が後悔していること。それは60年近くも人生を過ごしているのにまだ誇れるものが何もないということだ。自分に対してもう、非常に不満なんですよ。もし明日、事故で死ぬようなことがあったら悔やんでも悔やみきれない。まだ何も成し遂げてないから」
孫正義 300年王国への野望 著 杉本貴司より引用
価格:1,980円 |
ぜひ手に取ってみて頂けると嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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