5Gにはがっかりしている。
5Gでもっと未来的な世の中になると思っていた。
5Gに期待していた方も大勢いたかと思います。
2020年に5Gスマホが発売されましたが、
一般ユーザーが感じる5Gのメリットと言えばスマホの通信速度が上がった。
くらいではないでしょうか。
4GはアップルのiPhoneや韓国や中国のAndroidスマホが席巻し、
5G市場も国際的な視点でいうと日本は乗り遅れたと言われています。
通信業界で日本企業が世界をリードしていたのは3G時代のガラケー。
1989年に世界時価総額ランキング1位だったNTTは2022年時点で50位にも入っておりません。
本ブログで紹介するのはNTT代表取締役会長の澤田純氏が、
2030年に達成すべき目標や世界観を語ったパラコンシステンワールドという著書です。
5Gの特許取得やサービス開発に出遅れたNTTですが、
6G時代に世界をリードする、という目標を語っております。
その目標を達成する打ち立てられたのがIOWN構想。
そしてIOWN構想の元に生まれるのがパラコンシステントワールド。
馴染みのない言葉ですが丁寧に解説して行き、澤田純という人が何を叶えたいのか、
未来のテクノロジーはどのように進化するのかを深掘りして行きたいと思います。
- 未来のテクノロジーに興味がある
- ガジェット好き
- NTTグループ社員(笑)
①NTT代表取締役会長 澤田純ってどんな人?
1.1 澤田純ってどんな人? 経歴は?
大阪府出身。京都大学工学部土木工学科卒業後、1978年に日本電信電話公社に入社。エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ代表取締役副社長を経て、2014年に日本電信電話株式会社代表取締役副社長、2018年に代表取締役社長就任。菅義偉内閣が発足した2020年9月からは政府総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員も務める。2022年代表取締役会長。
ウィキペディア引用
本著は代表取締役社長時代の2021年12月に発売している。
本著内でも学生時代の専攻であり土木工学の「トレードオフ」の考え方について触れており、今でも考え方のひとつとして持っている描写がある。
しかしパラコンシステントワールド、直訳すると「平行した矛盾のない世界」という考え方に「トレードオフ」は即さないという自身の発言もある。
例えば利己的と利他的。
通常、自分の利益にばかり偏重すれば、他社は損を被ることが多い。
パラコンシステントワールドという考え方では利己的な振る舞いが利他的に作用したり
利他的に振る舞ったことが自身の利益に繋がる。
という考え方である。
今まで培った知識や経験を自ら覆すことが必要となるが、
澤田氏は自身の価値観や知識のアップデートに余念のない人だ。
1.2 破壊者の異名
組織再編 NTTドコモの完全子会社
澤田氏はNTTの社長を務めた4年間で、大々的な組織再編を行った。
その最たるがNTTドコモの完全子会社化。
ブランド価値としてNTTよりもドコモの方が高いとも言えます。
2005年ごろで言えば親会社であるNTTよりも時価総額が高かった時期すらあります。
すでに移動通信機器(スマホなど)は固定電話の普及率を上回っており、
固定電話の普及率は年々下降傾向にあります。
近年ではスマホと固定通信をセット販売することに各社重きを置いています。
NTTグループは固定通信(NTT東西)と移動通信(NTTドコモ)が、
別会社でそれぞれが事業を展開しており、
非効率かつ、顧客ニーズに即していると言えませんでした。
NTT東西と同様ドコモを完全子会社化すことで経営の主導権が握ることができます。
さらに澤田氏は任期終了間近の2022年1月にNTTコミュニケーションズ(国際、長距離通信)と、
NTTコムウェア(システム開発、ソリューション)をドコモの完全子会社にするという組織改編を行いました。
NTTを母体とした組織再編により「世界をリードする」ことを強調しており、
まさに世界と渡り合うための組織改編と言えます。
組織改編は必要だと言われながら20年成し得なかったことを澤田体制で実行しました。
余談ではありますがホリエモンこと堀江貴文氏も「ビックニュース」と称し、
NTTドコモの完全子会社化を自身のYouTubeチャンネルで高く評価していました。
1.3 読書家であり、強い哲学や思想を持っている
本著の中で技術者や専門家の方と対談するに当たり、多くの書籍の名前が出てきます。
〇〇を読んで◻︎◻︎が参考になった。
など。
対談相手にも「澤田さんは読者家ですね」と評されておりました。
本著の中でもIOWN構想の達成には「哲学を持つことが必要」と語っております。
NTTのような国営企業が民営化し、さらにはサラリーマンとして1からキャリアを築き上げてきた人間には珍しいタイプの考え方です。
さらに最終章では「新しい哲学が必要」という話題が出ております。
技術革新が行われれば既存のルールは不適切ににある場合があります。
新しいテクノロジーを使いこなすためには、それ相応の考え方が必要になってきます。
加えて後述する IOWN構想に電子工学や光子工学は必須の知識。
理系と言えど澤田氏にとっては専門外の分野。
技術者・研究者とコミュニケーションをとる上でも知識を取り込むことは重要で、
澤田氏は知識の吸収に積極的なのを本著から感じられました。
② パラコンシステントワールドとは
NTTの会長(2022年9月現在)澤田純さん著書のパラコンシステント・ワールド。
最初に思ったことは、
パラコンシステントって何だろう?
聞いたことない……。
です(笑)
パラ=平行、並列
コンシステント=一致している、矛盾のない、つじつまの合った
パラコンシステントワールドを直訳すると「平行した矛盾のない世界」。
つまりどういうことなのだろう。
本著では一見対極にある2つの事柄を同時に成立されることはできないか。
について対談形式で書かれております。
- デジタルとアナログ
- グローバルとローカル
- 利己的と利他的
デジタルと対比で用いれれるのはアナログであることが多いでしょう。
国際的なことと地方の比較もあります。
自分の利益を優先する利己的かか相手の利益を優先する利他的か。
相反するものとして使われます。
パラコンシステントワールドは両立するのが非常に困難な2つを成立させた世界。
本著は難題に取り掛かろうとしている澤田氏の哲学や思想、あるいは手段やここまでの結果が書かれております。
についても模索し実行する。
難題に取り掛かろうとしている著者の哲学や思想、あるいは手段やここまでの結果が書かれております。
③ IOWN構想とは
IOWNとはInnovative Optical and Wireless Networkの略
Innovative(イノベーティブ)=革新的、これまで無かった新しさ
Optical(オプティカル)=光、光学、工学に関する
Wireless(ワイヤレス)=無線
Network(ネットワーク)=通信、輸送、連絡を保って網状になっている構成
直訳するとIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想は、革新的な工学と無線通信という意味になります。
革新的な工学と無線通信って何だろう。
以下の3つの仕組みで説明していきます。
3.1 オールフォトニクスネットワークとは
本著では「ネットワークから端末まで、全てに光技術を導入する」と書かれております。
自宅にインターネット回線を引いている方も多くいらっしゃると思います。
パソコンとLANケーブルを繋ぐ。
ここまでは一般家庭でも光通信ができております。
オールフォトニクスネットワークは、
端末内の精密機器も光通信にすることを構想しております。
現状、端末内でデータ通信を行っているのは電子です。
電子から光にデータ通信を変えることで多くのメリットが生じます。
- 超高速通信
- 大容量通信
- 低遅延
どこかで聞いたことのある3つ。
5Gの特徴の挙げられるのがこの3つです。
オールフォトニクスネットワークは今後生まれるであろう、超高速、大容量通信、低遅延が必要となるサービスの基盤とも言える仕組みです。
3.2 デジタルツインコンピューティング
実世界とデジタルの世界をつなぎ、未来予測を実現する「デジタルツインコンピューティング。
NTT開発のHP内のデジタルツインコンピューティングページ以下の大項目が記載されております。
- ヒトと社会のデジタル化世界を創造する
- ヒトの意識や思考をデジタル表現する挑戦
- ヒトの内面をデジタル表現する2つのアプローチ
デジタルツインコンピューティングの概念や仕組みに関しての説明には専門用語が多く使われており、知識が問われます。
しかし僕はこの3つのフレーズを見た時、パッと思い描いた印象が以下でした。
2作品が分からない方には申し訳ございません。
物凄く簡略した説明をするとオンライン上の街や土地で自分のアバターを実世界と同等に動かせる世界。
先述したオールフォトニクスネットワークによって超高速大容量通信が可能となり、実世界のようなグラフィックのオンライン空間が出来上がります。
そして低遅延通信によってリアリティある世界を自在に動けて、思考さえも表現できる。
まさにサマーウォーズやソード・アート・オンライン(以下、SAO)の世界。
SAOでは2022年に「完全な仮想空間が実現」という世界観ですが、
作者の川原礫さんが思い描いた世界には残念ながら間に合わなかったようです。
2017年にNTTドコモとバンダイナムコゲームが共同で東京ゲームショウに5GVRゲームを発表しているため、少なからずIOWN構想にはSAOの世界観も含まれていても不思議はありません。
3.3 コグニティブ・ファウンデーション
コグニティブ=認識の、認知の
ファウンデーション=土台、基礎、根幹
コグニティブ・ファウンデーション=認識の土台という直訳になります。
認識の土台、認識の基礎、根幹???
毎回この件を繰り返しておりますが、日本人にとって和訳は重要です。
NTT開発のHP内のコグニティブ・ファウンデーションページに以下の大項目が記載されております。
- 自己進化型サービスライフサイクルマネジメント
- 無線アクセスを最適化するCradio(クレイディオ)
- 異なるレイヤのリソースを最適統合するマルチオーケストレータ
この3つをものすごくざっくり乱暴にまとめると
「コンピュータが自律的に自動で最適な方法を選んでやってくれる」
と表現します。
もちろん上記のような都合の良い機能を実現するための概念や仕組みはありますが、
残念ながら僕の知識では処理できませんでした。
単語を乱暴に要約するだけでも骨が折れました(泣)
3.4 IOWN構想を要約すると
IOWN構想を実現する3つの柱が以下で
- オールフォトニクスネットワーク
- デジタルツインコンピューティング
- コグニティブ・ファウンデーション
言い換えるなら
- 超大容量高速通信、低遅延な光通信で
- 実世界のヒトの思考や認識も含めデジタル世界で創り
- 実世界とデジタル世界を自律的に自動で最適に運用する
という要約に行き着きました。
2022年の現在の価値観や世界観からすると本当にサマーウォーズやSAOの世界。
あるいはドラえもんの世界と言っても過言ではありません。
NTTは2030年にIOWN構想の実現を目標に掲げています。
④パラコンシステントワールド、IOWN構想を実現する「あいだ」という概念
本著には「あいだ」の表現をいかにすべきか。
ついて多くの議論がなされています。
- 音楽
- オンライン会議やオンライン飲み会
音楽であれば生演奏やLIVEとデジタル音源では「何かが抜けている」。
と、感じる方が多いでしょう。
ハイレゾ音源が出回った昨今ではより滑らかな音を表現できるようになりました。
図を見て分かる通り、CM音源よりも滑らかになったハイレゾ音源も、原音の滑らかさには至りません。
デジタル世界の「0」「1」では表現しきりていないものがある。
何が足りないのか。
本著では足りないのものを5感、あるいは第6感として例に挙げています。
現在の技術は視覚や聴覚はデジタルやオンラインでの再現度は高くなっている。
しかし「触覚」「嗅覚」「味覚」は表現すらほぼできていない。
僕自身も数年前にテクノロジー系の展示会で空気を振動させ触感を再現するブースに立ち寄ったことがあります。
実世界とデジタル世界の「あいだ」を埋めることがIOWN構想の課題であり、
実現する3つの柱が以下で
- オールフォトニクスネットワーク
- デジタルツインコンピューティング
- コグニティブ・ファウンデーション
言い換えるなら
- 超大容量高速通信、低遅延な光通信で
- 実世界をヒトの思考や認識も含めデジタル世界で創り
- 実世界とデジタル世界を自律的に自動で最適に運用する
になるわけです。
⑤未来のテクノロジーとは
本著ではIOWN構想の一角を成す高速通信、大容量通信、低遅延のオールフォトニクスネットワークを駆使したOriHimeというサービスについて触れております。
障がい者が遠隔でロボットを操作し、カフェスタッフとして従事するサービス。
すでに20mm秒の低遅延を実現しており、オペレーションもスムーズで利用者にも好評とのこと。
ここまではまだ想像の範疇だと思います。
残念ながら本著でこれ以上の具体例は明記されておりませんでした。
ここからは僕の想像や妄想になりますがIOWN構想の完成形はいくつかの世界線はあれど、
下記のような世界を目指していると考えます。
- ドラえもん
- ソード・アート・オンライン
ドラえもん。
人型ロボットが自律的に最適解を提案し、自己実現をする。
これはコグニティブ・ファウンデーションの概念を連想させます。
ソード・アート・オンライン
完全なる仮想世界を実現し、痛覚や思考を実世界と同様に再現する。
これはデジタルツインコンピューティングの概念を連想させます。
そして仮想世界での死は現実世界での死を意味します。
冗談です。
漫画やライトノベルといったフィクションをノンフィクションにする未来。
僕はIOWN構想の完成形をフィクションとノンフィクションの共存。
これもパラコンシステンワールド的な発想で期待しております。
気になった方は是非とも本著を手にとって頂き、感想等を共有して頂けたら嬉しいです^^
最後までお読み頂きありがとうございました。
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